『この世の外へ クラブ進駐軍』監督・出演者トークショー

・阪本監督:阪

・村上淳:村

・MITCH:M

・高橋かおり:高

・司会:司

・強瀬:強



阪:本日は暑い中お出かけくださり、ありがとうございました。深谷もそうですし、児玉や熊谷という近辺というか、そういうところで撮影した映画なので、生まれた場所に戻ってきたというか.…公開も終わって、DVDやビデオになっていますけど、やっぱり映画はこうやってスクリーンで観ていただくのが一番だと思います。このあと村上君が面白いこと言うとおもいますけど…本日はありがとうございます。

村:本当に今日はありがとうございます。そうです、映画はやっぱりスクリーンで観るのが一番だと思いますが、僕は昨日DVDで観ちゃいました。特典映像が面白くてですね、この土地で僕はクランクアップを迎えたんだなぁと思うと、…(沈黙)ありがとうございました。

高橋:こんにちは。高橋かおりです。私は、撮影がもう2年、3年くらい前なので、もう、こう記憶を…どのような撮影だったかなとずっと思ってたんですが、ともかく暑くって扮装するのにすごく時間がかかって、大変だったなという印象があります。こうやって何年か過ぎて、こういう会場でまた上映されるのは凄く嬉しいことだと思います。やっぱりいいですよね。以上です。

M:こんにちは。MICTHです。撮影と、上映、公開の時にはみんなと一緒にやらせてもらってですね、映画とかこういう世界は、まったく「クラブ進駐軍」だけなんです。その後はずっと普通に音楽をやっていたのですが、こうやってまた映画祭とかでみんなに観てもらったりとかですとか、またこういうふうにみんな、仲間達と会えたりして僕も嬉しいです。ありがとうございます。

司:どうもありがとうございました。そして、この映画のロケは、この埼玉県で撮影が行われたと聞いております。その時の秘話などがたくさんあると思います。映画祭スタッフの強瀬を交えてトークショーの方、進めさせていただきたいと思います。

強:映画祭の強瀬と申します。よろしくお願いします。監督お久しぶりです。私は一応美術応援ということで撮影に参加させていただきまして、監督にも色々とご迷惑をおかけしました。そのへんの撮影秘話などを監督からお願いしたいのですけれども…深谷ではですね、シェー・ウィガムさんとピーター・ミュランさんの廊下のシーンとトイレのシーンが深谷市です。その辺のエピソードから監督、お願いします。

監:えぇエピソードっていっても難しいんですけどね、とりあえず、脚本の中で一番シーン数の多いところ、場面数の多いところを拠点として見つけなければならない。そのときに、今回、まぁ昔の話しですから、焼け跡やら道を作る場所をまず探して、それを埼玉県内で見つけて、じゃあもういろんな場所を埼玉にしようと。そういう能率ですよね。一部長野県に行ったり、かなり遠いところまでロケには行ったんですけど。まぁ本拠地として、児玉、深谷、熊谷という場所を決めて、なおかつ、その中で、探してこないといけないのは、戦後すぐに接収された日本の陸軍の跡地という。色々写真を見てますと、コンクリートの建物もあるんですども、木造で出来上がっている、木造で平屋みたいなものの棟がいくつもあるような写真を見たんで、そういう場所をずっと探して、養鶏所の跡とか、それからスリッパ工場の表っていうのもあったし、あとは闇市をたてた児玉のある砕石場というか砂利の工場の敷地内にね、建てて、そこの社長さんがすごくいい人で、日本映画を観ていらっしゃる方だったんで、かなり便宜をはかっていただいて。…えっと、ダラダラ延々としゃべれるよ、どうしましょう?(会場笑)

強(以下司):お願いします。

監:はい、えっとですね、それで苦労しました。エピソードっていうのは、結局現代のものがどっかに映りこんじゃいけないわけですよね。部屋の中撮ってても、窓の外を向けた時に現代のものが見えない、そういうところを探さなければいけない、そういう苦労があって。ま、焼け跡のセットを作っても、そこの社長さんの家が映りこむんですが、日本家屋なんで、映りこんでも構わないんですけど、テレビのアンテナとかが立ってたんで、そういうのをはずしてもらったりして、社長さんは2ヶ月位多分テレビ観れてなかったと思うんですけど、そいういうふうにいろんな方の協力があって、ほとんどCGを使わないで、生っぽく撮れたということですね。

司:ありがとうございます。えぇ村上さんは…

村:はいっ!

司:(クランク)アップが 児玉町のオープンセットのロケ地だったんですよね。

村:はいっ!

司:あと、楽器倉庫の撮影が埼玉なんですけど(熊谷市)、その撮影の時のエピソードというか、覚えていることを、何かありましたら…

村:うーん。倉庫って、あの大杉(蓮)さんとかが出てくるとこですか?

司:はい。

村:大杉(蓮)さんがはしゃいでて面白かった。

司:大杉蓮さんが?どんな感じで?

村:…はしゃいでた…。面白かった(会場笑)
でもよかった、なんか気になってたんですけどー、そのTシャツ(クラブ進駐軍のTシャツ)着てこようと思ったんですけど、だぶんなくてよかった。(笑)

司:あはは。会場にも何人かいらっしゃると思うんですけど。

村:よかった。今日着てこようと思ったんですよ、僕朝選んだの。(会場笑)

司:それで、すごく暑かったですよね。あの日も。(クランク)アップの時の気持ちというか…?

村:う〜ん、アップということもあったんですけど、まずあの作りこまれた闇市の凄さ、ですよね。技術の…隙がないすよね。それは、EMクラブもそうですけど。ま、そこまでの状況に置かれると、もうやるしかないですからね。アップ…まぁ、寂しかったというのもありますけどね。うん。

司:ピアノを猛練習されたわけですけれど、どうでしたか?

村:もう…見るのもいやですね。(会場笑)

司:(ピアノ)ご用意しますけど。

村:いや、ピアノはキーボード買って、四六時中練習してたんですけど、さすがにあそこまで弾けると、もったいないから、周りからも弾いといたほうがいいよ、と言われたんですけど、僕も最初そう思ったんですけど、(クランクアップの)三日後位かな、処分しました。はい。

司:二度とピアノは弾きたくない…?

村:いや、弾いてますよ。弾いてるんですけど、あの曲は不思議なもので忘れるんですよ。ほんとに。一番大事な「ダニーボーイ」って、すごく、全部覚えた曲なんですけど、次の日には弾けないんですよ。あれは不思議なもんですねー(会場笑)ねぇ。このままだらだらいっちゃいますよ。

司:すいません、ありがとうございます。

司:高橋さんも、ちょうどクランクアップが、児玉町のオープンセットのシーンで、かおりさん演じる役が、夢を語るという、このセットの中でも印象に残るシーンのところがアップの撮影でした。その後花火があがり、皆さんと乾杯をしたんですけれど、その時の思い出を…。

高:当初の私の(役の)終わり方は違ったんですよね。ストーリーの中で、私の(役の)結末が全然違かったんですけど、急きょ撮影の間に、監督さんが書き直して、「こういうふうに変えたから」とまったく180度違う終わり方になったシーンだったんですね、あの最後のシーンは。

村:朝一番で改訂校が出るのが、名物なんですよ。

司:阪本監督の?

高:そう、すごく変わって、話がもう全然変わっちゃったんですね。私の役は。あそこのシーンは、夢に向かって頑張って生きていくよ、という感じの話だったんですけれど、そうですね…。すっごく練習、テストをたくさん重ねて、何回も何回もテストをして、タバコの煙の出かたとか、風向きとかで顔が全然見えなくなっちゃったから、もう一回とか、監督さんがそばで、カメラの脇で、タバコの煙を足したりとか、そういうことをすごくして…。

監:あれは足したんじゃなくて、タバコの煙が、レンズにくるんで、レンズの横で(息を)吹いてたんです。あなたがそれを見えちゃうと、噴出しちゃうかもしれないんで、すーごく大変だったんです

高:あ、そうなんですか(笑)近くにいて何かをやっているな、というのは思ったんですが、何をしているかは勿論見えてないんで、監督さんが、そばで何かをやっているな、というのは。あれは吹いてたんですね!あ、そうなんだ〜…

村:雪のシーンもそうですよね。

監:雪がね、ま、発砲スチロールだから、レンズの方に風でくっついちゃうのよ。そうするとせっかくいい芝居してもNGなので、それでこうやって…

高:監督さん、大活躍でした。

監:あのカット(タバコのシーン)は、本当に全部のね、高橋かおりちゃんのとこが、すべてのクランクアップのカットだったんで。

司:途中でかおりさん演じる役柄が変わったというのは、何か監督の方で、撮影の中で(理由が)あったんですか?

監:うーん、今回久しぶりに自分で資料を調べて、久しぶりに脚本を書いたんですけど、やっぱり調べようと思えば、いくらでも資料が出てくるわけですよね、その時代の。そうしたときに、まあやりつくした感があって、シナリオ読みしたんですけど、やっぱりクランクインしながらも、同時にまた新しい資料を読んだりとか、あるいは高橋かおりちゃんがやることで、いくつかのシーンを撮りながら、結末はこうじゃないほうがよいよな、とかやっぱり生の人が演じていく中で、自然に変化していったとこでもあるし。あの時代のいわゆるパンパンというのは、僕はもとは先入観があって、いわゆる売春しているという、身も心も捨てちゃってるというイメージがあったんですけど、いろんな本を読むと、新橋、銀座にみんなで店を出すとかね、そういう目的があって、当初政府にだまされて募集かけられてたりした人がたくさんいたわけですよね。それを知った時に、単にあの時代には、パンパンという売春婦がいました、というような結末にどうしてもしたくない、というか、高橋かおりちゃんがやってるんだから特に、ステレオタイプで終わらせたくない、ということで。

司:ありがとうございます。それではMITCHさん、お待たせしました。MITCHさんは、トランペットを、丘の上でひとりで吹くシーンが埼玉の児玉町で闇市があったシーンと同じ場所なんですが、その時のエピソードを。

M:あれも監督があとから作らはったというシーンやったらしいんですけれど、他のやつは基本的に合奏とかなんで、いろんな角度から撮るから、音はあとから演奏を別で録ったりしたんですけど、あそこだけは、その時のアドリブというか、ま、ジャズは基本的にアドリブなんですけども、こんな感じで、この何秒位で吹いてくれへんか〜みたいな感じで、ほんまにあの現場にいってからこういう感じで吹こうかな〜とか。

司:その時考えた曲?

M:いや、その前から大体練ってね、シーン的にこういうふうな雰囲気が…でも結局はそこで毎回撮るたびに、何回かやる度にちょっとずつ違ったりとかもするし。サイズにもね。生でもあのまま音も録ってたんで、あとは、そのシーンだけじゃなくて、演奏してる時だけこう、普段の僕に戻るとまた全然違う雰囲気やと思うんで、それもいっぱい考えながら演奏してたような…。あとは、あれはちょっとホントは吹いたあとに、倒れてくれと言わらはったんですよね。それで、吹いて倒れて、吹いて倒れて…ずっと考えたりね。色々考えながら吹いてましたね。もう音も同時に考えてたんでその時は。何回かやってたんですけど…

阪:そのMITCHのトランペットはま、プロですからね、OKなんですけど、何回もやり直す理由が、手前の子どもが背負った犬がね、うまくいかないんですよ。犬のNGみたいな。

M:でも僕、一人だけ丘の上にいるから、何が行われているか全然わからないんですよ。それでなんか、人がここを通った瞬間に音を出してくれとか言われて。あとはむこうで何か言われてて、どういうことでもう一回だかわからへんし、お〜いとかいうそんな感じでしたね。

司:MITCHさんは世界的なジャズトランペッターなんですけれど、(MITCHさん「いえそんなこと全然ないんです」)今回の撮影、演技はどうでしたか?

M:いや、もうまったくわからない世界なんで、小学校の学芸会以来なんで、演技をするというのは。監督の言われるように、なんとか…ですね。だからどういう風に書いてある台本のセリフをしゃべったらいいかもわからへん、というとこやったんで、一応基本的なことは前もって教えてもらって。結構、いろいろ練習してやるのかなと思ってたんですけど、映画ってそうじゃないらしくて。いきなり出演者がその現場にあって、いきなりやるらしいんで。その前に監督にポイントみたいなのは聞いて。でも一応家で練習してもわからないんで、あとは、みんなどうやって役づくりをしてはるのかというのはわからないんで。とりあえず“痩せろ”という命令で。痩せることに専念してるとそうなっていったんかな、という感じでしたけれど。

監:何キロ痩せたんだっけ?

M:十一、二キロ位ですかね。

司:あとで痩せ方教えてください(笑)
監督は、今回MITCHさんをその役者として使われたわけですけれど、その印象というのは?

監:バンドの中に、俳優さんにミュージシャンの役をやらせるか、ミュージシャンに俳優の役をやらせるかという二者選択があったときに、ひとり、ミュージシャンに俳優をやってもらおうというのがあって、それで音楽監督の紹介で、京都にMITCHというのがいると、一回面接したらどうだというので、京都のホテルのロビーに行って待ってたんです。けど、(MITCHが)遅刻してきたんですね…なめてんのか!と思って、(MITCHさん「すいません!」)やっぱ、俺が考えるジャズメンに見えなかったわけなんですよ、これで(MITCHさんの服装を指差す)サングラスに、二日酔いだったから(笑)。普段ニューオリンズで演奏していて、ちょうどニューオリンズに留学も決まっていたんですけど、それと撮影とバッティングして、最終的に留学を遅らせて映画に出ますということを言ってくれて。で、何回か話をしているうちに、頭かたくないというか、自分のこだわりというのは当然あるんだろうけど、若い頃にぽっとニューオリンズに行って、そのままクラブで演奏させてくれ、とかいうようなところからやっている子だから、何か目の前にある新鮮なものに、動じないで、自然に入ってくるようなタイプで。彼には俳優さんのバンドとしてのまとまりとか、演奏シーンのためのスタジオでの練習なんかを客観的に見てもらって、芝居の方は別個にリハーサルをして臨んだんですけどね。MITCHでほんとよかったと思うし。ただ、映画に出てもいいことないよ、と(笑)これは事故だと思って、と。この映画終わってから次に仕事がくるということは絶対ないからね!とそれだけは釘を刺したんですけどね。

M:さんざん言われましたね。はい。

司:今のMITCHさんの中では、また声がかかったらまたやってみようかなという気持ちはあります?

M:声がかかれば…ねぇ。でもやっぱり、撮影3ヶ月位、その1ヶ月前から東京でマンスリーマンションにずっといて、みんなと一緒にいたりして、すごい素晴らしい仕事やなと思ったし。やってる時はすごい興奮してたから、内容どうのこうのよりも興奮してたことは凄い気持ちよいことやし、そういうふうに思ったんですけども。一流の役者さん達や一流のスタッフさん達の仕事っぷりをまざまざと見て、やっぱ中途半端にね、何かあったらやりたいなぁみたいなのは、みんなも期待してへんし。僕もみんなのことを尊敬して、みんなも逆に僕のことをミュージシャンとして認めてくれて、扱ってくれてるから、やっぱ僕にも世界があって。阪本監督と今でもたまに会うて話をしてると楽しいし、何か機会があったら勿論やりたいなとは思いますけど、別に意識してはそういうことはないんですけど。

司:ありがとうございます。では、一流の役者の村上淳さんに…(村上淳さん「ひぇっ?」)
今回MITCHさんとのバンド練習と演技という中での、エピソードといいますか、MITCHさんとの思い出がありましたら…。

村:基本的にですね、公民館みたいなところで、みんなで集まって練習するんですよ。各パートが。で、萩原君も会ったのが初めてだったなのかなぁ、(松岡)俊介は前から友達だったんですけど。でも「おはよう」と言って4時間位そこ借りる(入る)んですけど、それ以来会話がないんですよ、1ヶ月間。

司:MITCHさんがですか?

村:いや、全員が!もうそれどころじゃないんですよ。練習で。もうほんっとに!撮影期間が2ヶ月あって、ちょうどピークの演奏シーンが終わるちょい位前から、ようやくみんなが本当に笑顔で話すようになったんだよね。うん。
MITCHはMITCHで、勿論生で(音を)出せと言われれば出せるんですけど、いわゆる自分でアドリブで吹いてる分、アドリブを音符に直して、それを当てなきゃいけないじゃないですか。その苦労もあっただろうし、僕らは覚える苦労があるから、勿論芝居もあるし…。みんな凄く楽しくて、仲よかったんですけど、ほんと撮影2ヶ月…終わる位ですよ、(撮影シーンが撮り終えたら)みんなはじけてましたね。

司:それまではそれどころじゃない?

M:いやほんっとに。

司:じゃ、撮影終わってちょっと余裕のある時はみんなで一杯やるとかはそんなになかったですか?

M:いや、MITCHと萩原君はあったらしいんですけど。やっぱこの映画、ラッキーストライカーズとして萩原君でよかったなと思うんですよ。人間性、まとめ方といい。彼も努力を見せないんですよ。ひとりでカラオケボックス行って、サックス吹いたりとかしつつ、スロットも行ってるんでよ、ちゃんと(会場笑い)。いや僕それどころじゃなかったんですけど、それ朝から聞いて、すごいなーと思ってました。で、ま、そのあと、みんなで美味しいもの食べに行ったりとかして。それも萩原君が仕切ってくれて。監督には、何で俺を呼ばないんだと怒られましたけど(笑)はい。

司:それは他のラッキーストライカーズのメンバーも一緒に?

監:一緒にね、北海道にカニ食い旅行に行ってるんですよ、撮影終わって。

村:それはほんとに「ROSE」っていう黒人ジャズクラブでの演奏シーンが一番難しいところで。みんな的にも。ひとりひとり終わるんですよ。まず、ピアノだったら、ピアノから始まって俊介君のところへ行って、みたいな。で、外で狭い道路でみんな「どうだった?」みたいな。ハーイパーン!って(ハイタッチ)そっから、「じゃぁさぁ、北海道行かない?!うまいもん食いに」とか。「行こう行こうよ」って

司:5人で?監督には一言も…?

M:いや、多分ですけど、僕もオダギリも松岡もそういうタイプじゃないんですよ。初体験ですね、共演者とそういうことするのは。

司:監督はなぜ誘わなかった…んですか?

監:いや、僕の悪口言ってカニ食うんですよ。絶対そうに決まってる(会場笑い)だって、スタジオでピアノの練習してる時に、村上がね、楽譜投げて「こんなの出来るわけねーじゃねぇかぁっ!」って叫んだの知ってたから…そういう憂さ晴らしに北海道行ったと思うんで。

M:いやっほんとにも、できるわけないんですよ。(会場笑)よくやったと思いますよ。そこに(舞台裏に)先生いるんですけどね、先生ちょっと呼んでいいですか?

司:是非!先生お願いします!

村:当時で23歳なんですよ、僕が29かなんかで。厳しいんですよぉ。大橋君です!

壇上に大橋先生登場

先生:ほんとに役者さんの皆さん、演技やりながら演奏しなきゃいけないんですけど、演技に対する情熱と笑顔を作り上げなければいけないという、その執念、それがほんっとに凄くて。1ヶ月っていうほんとに短い時間の中でやりあげた。

M:ほんとに21歳と22歳の子たちが全部教えてくれてて、特にピアノに大橋君がついてくれてて、やっぱこうできないわけですよ、初めてピアノに触るわけで。(先生は)昔からやってるじゃないですかぁ、出来て当たり前の感覚なんですけど。一小節二小節を1時間位かけてやるんですよ、最初の方は。たまに「ちっ(舌打ち)」とかするんですよ。
(会場笑い)

先:それは…それは勘違いなんですけどね。

村:でも、「ちっ」っていうのは自分でも気づいたらしくて、だんだんガムの量が増えるんですよ。あ、ガムの量が増えてきた、イライラしてきたなぁ、がんばんなきゃと(笑)

先:それは悟られないよう心がけてたんですけど

村:実際に弾いてるのは大橋君で、それに(役者が)完璧に当てるようにしたのが、今回の作業ですね。

先:でもホントに弾けるようになってますから、あの通りに。ほんとに頭が下がりますよね。ほんとに。役者さん。

村:態度デカイんですよぉ。(会場笑い)

先:俺っすか?そんなことないっすよ。

M:態度デカイ(会場笑い)

村:ほんと心から感謝してますよ。最初2週間拘束だったんですよ、それが3ヶ月に伸びたんですよ。

先:そうですね、撮影のときも横で間違えないように見てて。監督が、「間違いたりしたら、もう一回やり直しって言ってくれ」って言うんですけど。とてもそんなこと言える雰囲気ではないんですよ。「大丈夫だよね?」っていう…「ダメだって言わせないよ」っていう…

村「大丈夫だよねっっ!」(語尾を強く)

先:怖くてもうほんとに。ほんとにダメな時しか言えなかったんですけど。凄い世界だなぁという。僕も初めてだったんで。

司:ありがとうございます。そんなラッキーストライカーズは練習で精一杯だった中で、大変な撮影だったんですけれど…高橋さん、(メンバーとの)絡みのシーンはトラックのシーンですよね。その時のラッキーストライカーズの面々の雰囲気はいかがでしたか?

高:トラックのシーンは、セットの中で、丸一日かけてワンシーンを撮った日で、私も初日だったんですね、撮影が。朝入って支度して、終わったのがもう7時8時位、ほんと一日がかりで撮影して。私は皆さんとお会いするのも始めてだったですし、自分の役でもいっぱいいっぱいでしたし、映画の世界ってワンシーンを一日かけてやるって最近なかなか無いことなので、久しぶりに映画の撮影現場に来たな、という興奮で一日を過ごしてしまったので、皆さんがそういう状況だったなんて全然わかんなかったんですけど。でも凄く楽しくて、終わって友達とかに電話とかで「こんな最高の現場に行ってきたんだよ」って興奮冷めやらぬまま…凄く楽しかった。

司:ラッキーストライカーズと高橋さんがトラックの荷台に乗っているシーンですよね。
村上さんはどんなところが大変でしたか?

村:(舞台中央を指しながら)ここに車があるわけじゃないですか。僕らが乗り込む前の芝居のときに、(舞台の左手を指して)ここにテーブルにあって、ラッキーストライカーズがタバコ吸ってるわけですよ。うるさいわけですよ、トラックの音が。監督がスタートって言ったらシーン…とするじゃないですか。それで(トラックのエンジン音の為)大きな声で張り上げて芝居しなきゃいけないし。それで僕らラッキーストライカーズがテーブル横で(高橋さんの芝居を)見てるわけですよ。で、何十テイクもやり直しやり直しって。「わー怖いねー」って言ってるうちに、阪本さんがこの中間あたり(テーブルと車の中間あたり)で、「おい、ラッキーストライカーズ、おまえらも見とけ!」って。で、僕らは「はいっ!」って言ってタバコすぐ消して、ほんとに5人並んで体育座りでみんなで(トラック横に)。それでも終わんなくて昼ご飯またいで、ずーっとそのシーン撮って。で、一時間位OK出なかったんだよね?(高橋さん頷く)ずーっと。で、僕らも「怖いね、怖いね、気をつけようね、声出していこう、声出していこう」(←体育座りをしながら)。…ほんとに映画の現場で、20テイクも30テイクも行かれると、もうね、ふわふわして何がなんだかわかんないんですよ。

阪:2回目とかがよかったよね。(笑)やり過ぎたよね。結局…狭いんですよ、トラックの中が。スタジオの中にトラック入れて、暑いし、本番はクーラーの音が入るんで、本番近づくと(クーラーの音を)消して。しかも、美術部は重たいトラックを30人がかりで揺らさないといけないんですよ。…でもまあ、高橋さん初日だっけ?僕は助監督やってる時に、実は高橋かおりちゃんと2本仕事をしてるんですよ。1本はワンシーン位なんですけど、もう一本はパンフレットに書いてますけど、「プルシアンブルーの肖像」って玉置浩二さんの映画で、彼女は小学校6年生で主役。僕は助監督で、(高橋かおりさんを)おんぶしてたりしたんですよ、現場で。

高:…そういう仲なんです。

阪:高橋かおりちゃん、懐かしいなあ、一回仕事したいなあ、って思ってて。小学校の時の高橋かおりちゃんのイメージが頭にあるのに、パンパンの役を頼んでる俺ってのはなかなかね、整理がつかなくって。でも、なんていうかパンパンの役だからとか、自分のイメージだからとか、そういうイメージが壊れるとかなんとかの仕事のチョイスをしてる人じゃなくて、例えば脚本を気にいってもらったりした時に、まあ受けてもらえるだろうっていう…でもね、小学校の時の彼女の思い出がね、撮影しながらもよみがえってくるんですよ。かおりちゃん、パンパンなんだから!とか言いながら(←自分に言い聞かせている。)。ずっと小学生の思い出がね、あるんですよ。でも、僕のこと覚えてないでしょ?

高:おんぶして頂いたのは、鮮明に覚えています。

司:監督とかおりさんの「プルシアンブルーの肖像」以来の再会は、クラブ進駐軍だったんですか?

阪:日活の食堂で会ったりしたことはあるんだけど、ほんとそうですよ。

高:はい。お仕事するのは。

司:久々に再会した阪本監督の印象は?

高:監督さんとしては初めてだったので、どういう演出をなさるのかな、と思ってたんですが、初日の日に「あ、映画の世界だ」っていうのをまざまざと見せつけられまして…さっきも言いましたけど、一日に何シーンも撮るというのは、今の映画の撮影の中では、出会いたくでも出会えないんですね。そういう現場は。だから辛抱強くなかなかOKを出さない監督さんが、すごいなあと思いましたし、妥協をしない監督さんなので、素晴らしいなと。勉強になりました。

司:村上さんは阪本監督と、「仁義なき戦い」に続き、2回目ですよね。監督の印象は?

村:まず監督が、一番ストイックに映画を作ろうとするので。特に俳優とかは、監督とか演出家とかに見てもらいたいじゃないですか、いくら奥にいようが前にいようが、カメラがここ(目の前)にいようが…って思ってると、監督がまず俳優をつるんと裸にするんで、すぐ見透かすんで。なおかつ監督が一番リスクを背負っていくんで…。一番厳しいとこが、結果的に一番気持ちよかったりするんですよ。そうですねえ、だからさっき言ったように、結果的にワンカット、ワンシーンしか撮れなかったりっていう現場もあれば、テレビの現場だと、一日40カット位撮る現場もあるわけで。どっちがいい悪いというのはなくて。その人間性を見極めて、なおかつ芝居を、という…ことを求めている人間には、阪本組の現場は至福の場所ですよね。

阪:そうやって言ってくれて嬉しいんですけどね。結局、なんか「監督、今諦めちゃったなー」と思われたら、続けて仕事はできないんですよ。やっぱり映画は、俳優さんが色気をもって映ってるっていうのが一番大事で、そのためにキャメラマンや照明、録音とか音楽とか編集とか…やっぱり映る人のためにスタンバイするっていう。だから、すごく僕なりに、いくら若い俳優でも子役でも「あなたがこのシーン駄目だったら、映画に響くんだよ」という想いで、逆に大事にしてるつもりなんですよね。「あぁこれでもうOKを出そう」というのは、その俳優さんに愛情がない時、捨てちゃうんですよね。そしたらもうキャスティング失敗したみたいな感じ…だから粘るということが、粘られてすごく嫌な顔をする俳優さんも一方ではいるわけで、恥かかされたみたいな。どっかでそれはクランクイン前に、こういうところを目指してやりたいというのが伝わってくれば、無碍に粘っているわけではなくて、プライドの戦いでもなんでもなくて…やっぱり自分の役のための延長に、"for the movie"っていう、映画のために何かやっているというとこに一緒にいってくれればOKかな。だから粘る時もあるし、逆に粘って芝居が固まりそうだから、もう一発本番で一回でもOK出す時もあるし。それは、そのシークエンスにもよるし、雰囲気とか気分とかにもよるし。スケジュールを守るためにとか、いろんな事を考えてしまうし。

村:だからラッキーストライカーズのメンバーも、きっと映画の世界を全く知らないMITCHも、監督と会って、肌というか、瞬間の何かで…。見事でしたよ、MTICH。最初にバンドのオーディションがあるっていって、オーディション会場に行ったんですけど、どこのB−BOYだよーって感じで,ムクッとしてて。そのあと監督とラッキーストライカーズでお茶でも飲もうっつって…監督が「そうだなぁ…村上5キロな、MITCHは10キロ、萩原4キロんー5キロいっといたほうがええか、松岡そのままでええわ」って。

司:それは監督が痩せろっていうキロ数…?

村:つるっと言うんですよ。みんな「はいっはいっはいっ!」。

阪:で、「楽器覚えてね」ってね。

村:「村上ピアノ弾けな」 「はいっ!」(村上さん苦笑)

司:最後に、MITCHさん、阪本監督の印象は?

M:最初会うた時は、「12時って言いましたよね」(笑) …だいたい5分位遅れたんかな、ミュージシャンって遅れるものなんですよね、みたいなことも言われました。

阪:それでね、撮影所で神主さん呼んでね、安全祈願やるんですよ、全スタッフ、全俳優で…うん。遅れてきたのは萩原とMITCHだけ。ものすごくキレましたね、「ナメとんのか おらぁ!」ってね。

M:いやもうそんなもんじゃなかったですよ。

村:キレた監督久しぶりに見た…いや初めてかも。

M:ちょっと震えました。

村:またヘラヘラ入ってくるんですよ、車横付けで。

M:ヘラヘラしてた、俺??

村:してたよね。

M:ヘラヘラしてたつもりはないんですけど…仕事っぷりというか、自分のことで必死やったんで、客観的に現場を見たりとかの余裕がなかったんですけども…やっぱり全体を通して映画を作ることに集中力が凄い張り詰めたところで、集中力を尖らせて作ってはるなという…だから僕も楽器持ってたらついつい、音出したいなとか、今度撮るところさらいたいなとか、あったら吹いてみたりとか、いつもそうなんですけど…(自分に)ダメダメと思って。空気がね、張り詰めてて、集中力は凄いなと思いましたね。

司:ありがとうございました。皆様の今後の活動予定は?

阪:いやぁなかなかね、自分のやりたいことを見つけるのが大変で、今…無職です。なんか考えなきゃいけないんですけど…んーなんかやるでしょ、来年。今年はこの映画、とっくに公開終わったんですけど、10日位前にロシアのウラジオストックでこの映画が上映されて、来週またニューヨークでも上映するっていう。フィルムと一緒に僕も行くんですけど。やっぱり映画ってこうやって長生きというか、長続きして色々自由に海外行ったり、日本の映画祭行っている以上は、大好きな映画で愛着がありますから、なんかすぐ次のことに、これはこれでって切り替わらないんですよね。そういう意味では…またニューヨークでアメリカ人の反応を見て、そろそろ次のこと考えるんじゃないですかね。

司:それでは村上さんから順に皆さんに今後の活動予定をお知らせいただきたいと思います。

村:いや全然ないですね。(会場笑い)

司:いやっ、よろしいんですか?謙虚な…

村:11月2日に下北沢でDJします。

阪:あるじゃない、予定が。

司:ね、あるじゃないですか。ありがとうございます。高橋さんは?

高:えーっと、年内は地道にコツコツと前進していきたいと思っています。来年は、舞台の方を2月からがんばりたいと思っています。また近くなりましたらお知らせします。

司:MITCHさんお願いします。

M:ま、あちこちで演奏してますけども、関東は一応月に1回は行かせてもらってて、だいたい東京ばっかりなんですけど。一回ね、こっちの方でも出来たらいいなと思っていますけど、是非誰か呼んでくれたら…って営業してますけど。演奏のスケジュールはホームページ(Mitch-.web.net)に載っておりますので…あとは、年の半分位はニューオリンズに住んでいるんですけど、ご存知のようにニューオリンズは台風で80%位水に浸かってですね、ちょっとむこうの生活にも足半分入ってるんで、なかなか外から冷静に見てどうのこうの出来たりとかいう状況じゃなかったんですけども。だいぶみんなと連絡も取れたりして、特に黒人街のミュージシャンとやったりしてるんで、今度そのメンバーとまた色々交流して、逆に日本に連れて来て、今はむこうで全然仕事がないもんですから。こっちでニューオリンズのミュージシャンと日本人のミュージシャンが一緒に出来るようなコンサートとか出来たらいいかなと予定してるんですけども。またよかったら興味のある方は足を運んで頂けたらと思っています。

司:ありがとうございます。それでは本当に最後に今日来てくださった会場の皆様に一言お願いします。

M:今日はありがとうございました。今しゃべったばっかりだから…。そうですね、これまではろくに映画館にも行かず『スターウォーズ』を観に行く位やったんですけども、監督と出会ってから日本映画とかも色々観るようになったり、面白さがどんどんわかってきて…今またちょこちょこ観る位なんですけども、また是非監督や共演者の作品も観に行きたいなと思うんで、皆さんもまた観に行って欲しいなと思います。僕のライヴも見にきてください!本日はありがとうございました。

高:今日は本当にお集まりいただいて、ありがとうございました。映画の撮影現場はこういう感じで行われております。映画祭がどんどん発展していって、一人でも多くの方に、映画というものを観て頂けたらなと思っています。今後も映画を観に来て下さい。また呼んでください!

村:残念なことに、日本映画と呼べる日本映画が少なくなってきているような…。僕も映画を観る時、2回3回観るというのは滅多にないじゃないですか。この映画は2回目位から味がぐんと出てくるんですよ。うーん…。

阪:あ、DVD売ってます!ロビーで。メイキングが入ってます。

村:ほんとに、ぐーっと味が出てくるんですよ…僕が宣伝したって(お金が)僕に入ってくるわけじゃないですからね。ほんとにいいっすよ。うん、別に1枚買ってみんなに回せばいいんだし…はい。しめます。

阪:埼玉っていう土地柄東京からわりと近くて、これからも私の映画でなくても、色々ロケ隊が来たりすると思うんですよね。で、映画屋さんにも欠点があったりもするんですが…映画は映画館に観に行っていただいて、日本映画のファンになって欲しいと思うし、もし撮影現場にボランティアでも野次馬でも何でもいいんです。のぞきに行かれることがあれば、また映画のファンとともに、映画の現場のファンになっていただければと思います。本日はありがとうございました。




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