2006年10月15日 花の街ふかや映画祭
『花よりもなほ』
是枝裕和監督 &
寺島 進氏 トークショー
|
|
|
是枝裕和監督(以下K):こんにちは!いかがでしたでしょうか?たくさんお集まり頂きましてありがとうございました。去年の4〜6月頃、京都で撮影していた映画でして、僕としてはいろんなチャレンジをしながら、ほんとに豊かな時間を撮影の現場で過ごすことができて、いい思い出になっている作品です。
何かあの…現場でボクが感じていた、楽しさというか、豊かさというか、...ユルさというか、なんかそんなものが伝わっているといいなと思っています。まずは観て頂いてありがとうございます。
寺島 進(以下T):今日はお日柄も良く(会場笑)、遠路はるばる深谷までようこそいらっしゃいました!
去年の5月頃、一番いい季節の時に京都へ行けてとても嬉しかったんですけど、本当にまた是枝監督とご一緒できて、本当大好きな監督なんで、本当嬉しかったです。なんか...戻る所が自分にはあるんだなぁという気もしましたし、映画の現場の空気感がとても大好きな、なんかこう静かなトーンで、静かに活気があるというか..."精神衛生上"とてもいい撮影現場で...今回本当に演らせて頂きまして感謝しております(監督に一礼)。
そして今日また久しぶりに是枝監督と会えて、本当に嬉しいです。
K:最近よくテレビでお見かけしていますけれど…
T:その辺はまぁ、置いといて!…あのー来週金曜日、『逃亡者 木島丈一郎』。あの4本の中で木島丈一郎が一番視聴率が高いことを願っております!まぁ、一番かっこいい作品ですけどね。…自分で言うなって!(自分ツッコミ)
|
|
司:深谷市の印象はいかがでしたか?
K:レンガ作りの駅がねぇ、見事に二人で記念写真を撮ったんですよ
司:その写真ください!
T:それは「シネマツデイ」(注:本当は「シネマトゥデイ」)で。見れると思うんで。
K:せっかくなので、観ていただいた方の感想なり質問なりをいただいて、だらだらと進めていこうかな、と。
|
―以降是枝監督の提案で急遽観客との質問コーナースタート!―
|
|
質問1:次回作の構想と、それには寺島さんは出演なさるのでしょうか?
K:寺島さんは、僕の2本目『ワンダフルライフ』から4本続けて出ていただいていて、一番多いんですけどね。
ただ、“何々組”みたいなのが好きじゃないんで、この人(監督)の映画には(ちょっと出てよって言うと)本当は出なくてもいいのに出てたりするってのが結構あるでしょ。それはあんまり好きじゃないので、 この役だったら、また寺島さんの別の顔が見られるな、そういう役が思いついた時に、今のとこ、ほんと無理せず。
あ、こういう寺島さん見たい と自然と思いついた役をお願いしてるので。次も思いついたら書くかもしれませんけど。前提にしちゃうとね、なんか違うかな、と。
ただ、現場にいていただけると、役者さんとしてというより、同じ作り手の目線で現場にいていただけるのでね、そのへんは、なんといったら言いでしょうね、心強いんですよ。そういうのはほんとにあるんです。あんまり“男気”っていう言葉も好きじゃないんですけど…ただ、すごくこう…「よしっ!」と言ってくれる方なんで。ほんとにいていただいて…
T:必要であれば。いつでも。飛んでまいります!なんちゃって。
でも自分も最近、一面性だけのイメージだけで続いちゃって、どうやってこう変えてやろうかな、と思ってるんですけど。
ほんと是枝監督の場合は、そういうイメージとかうんぬんを別にして、寺島進っていう人間を、いろんな尺度から見てくれてまして、自分でも気づかなかった、こういう面があったのかな、という角度で切り取ってくれるので、とても嬉しいですね。はい。
質問者:ありがとうございました。
|
|
質問2:今までの作品から『花よりもなほ』まで、作品のインスピレーションはどこから生まれてくるのでしょうか?
K:インスピレーションはどこから生まれてくるか...(長い沈黙)...なんかわかんないんですけどね、飛行機に乗ってる時に、ふっと思いつくことが多いんですよ。でも、思いついた瞬間に撮れるものではないものだから、なかなか出来上がってる順番と考えついた順番と違うんだよね。
『誰も知らない』とかは15年くらい前にアイデアだけは思いついた映画でしたし...今回の時代劇も、『誰も知らない』を撮る前に『ディスタンス』っていう、ちょっと実験的な映画を、台本の無い、役者サンにすごく大きく負担の掛かる現場で、役者のドキュメンタリーを撮るぞって作った作品だったんですけど、それの直後に今回の時代劇のアイデアを思いついていて、一度きちんとセリフも書いてみて、自分の中から物語を生んでみようかなぁと。
それはやっぱり『ディスタンス』って作品をやった反動が、きっと自分の中でも起きてて...計算というよりかは、なんか"精神衛生上"自分でバランスをとるみたいなものがあるのかもしれないですね。それでこう 「よしっ、時代劇やってみようかなぁ」と...
(寺島サンを見て)本当飛行機の中が多いんで、それで(海外の)映画祭に行って書くことが...
T:明日から釜山(映画祭)ですよね?
K:そう、またなにか思いつくかもしんない。行く前に会っといて良かった。
T:(手を叩いて)ラッキー!(会場笑)
|
|
質問3:ワタシハ
アメリカ ミシガン州カラ キマシタ。 ソコデ『幻ノ光』
ヲ 観マシタ。素晴ラシカッタデス。『花ヨリモナホ』
ノ資金ハ
イクラデシタカ?(会場笑) ソシテ撮影ハ、簡単デシタカ?難カシカッタ
デスカ?
K:結構こまめにね、小さい美術館とか学校とかを、『幻の光』は配給会社の人がまわっていただいたので、かなりアメリカでは観てくれた人が多いですよね。
えっと、時代劇、お金がたくさんかかったか。今までの僕の作品よりは、ちょっと多めにかかっているので、いつもよりちょっと多めにギャラを払わせていただいた…(寺島さんを見る)→(寺島さん照れ笑いをしながら頭を下げる)。
ほんっとに、いつもはほんとに払えないのよ。申し訳ない、申し訳ないっていって。日本の役者さんはね、ほんとに大変なんですよ。映画はね、ほんとにギャラが少ないんですよ。それなのに、拘束期間が長いからね。ほんとに事務所の理解があって、本人が好きじゃないと、映画をやり続けるのは大変な位、なかなか(ギャラが)低いんですけど。
今回、そんな高くはないと思うんですけど、今までの僕の作品の約3倍位のお金をかけて作らせてもらってるんですけど。ただ、京都の撮影所の中に、ぼろぼろの長屋をオープンセットに作ったので、あそこにかなりのお金がかかってるんじゃないかなと思います。
撮影自体は、今回はじめて撮影所の中で撮らせていただいたので、今までのとだいぶ撮影スタイルが違ってるんですね。今までの映画は基本的にいうと、例えば前回のでいうと、あるアパートの中で、太陽の光、自然光だけで撮っていましてカメラも16mmのちっちゃいカメラで、2DKのアパートなので、カメラマンが押入れの中やトイレの中から撮っていたり、というようなことをずっとやっていたんですけども。
今回はあのオープンセットと別に、長屋の中を別にセットを組んで撮れたので、そういう意味でいうとね、撮影は非常に撮りやすかったです。壁もはずせるし。
普通の撮り方もできるやり方をしたんです。ただ、今までだと太陽の光で撮ってたので、日が暮れちゃったら昼のシーンは撮れなかったんですけど、今回はセットの中なので、全部作ってるんですよ。なのでね、逆に撮れちゃうもんですから、ずっと撮影してるんだよね。朝から夜まで。そのペースは最初はなかなか慣れなかったですけどね。朝の8時から撮影が始まるときは始まって、夜も12時とか1時まで撮ったので。そのあと僕は編集を毎日やっていたんで、結構体力的には、逆に撮れちゃうのも大変だったんですけどね。よかったです、まだ若くて。(会場笑)
|
|
司:寺島さんは?
T:長屋のセットは本当にもうアートって感じで、凄くステキでした。黒澤さん(黒澤明監督)の『羅生門』を撮っていた京都の美術スタッフ(大道具)さんがいて、その人と、是枝監督とずっとやってた磯見さん(美術)という方がいて、2人が融合してできた証なんで。だから凄くモチベーションあがりましたね。
司:撮影中のエピソードは…
T:(少し口ごもって)エピソードって言われてもねぇ。うーん、ちょっととまどった部分もありましたよ。とまどったのも瞬間だけなんですけどね。時代劇だからっていうわけじゃないんですけど、演出法がどんどん付いてくるなぁというか。ちょっと悪いクセがあったので、それを削除してもらったりとか。自分の責任なんですけどね。…あまり、エピソードはないです(笑)
デトロイトタイガース強いですねぇ。(会場笑)
質問3の方:World
series!
|
|
質問4:寺島さんはちょっと怖いイメージなんですけど、最近ちょっと可愛いらしい面もあって、良いなぁと思うんですけど。監督から見ての寺島さんのイメージと、寺島さんから見ての監督のイメージ、どんなところがいいのか、など教えていただければ…
K:最初にねお会いしたのがね、ロンドンの映画祭でお会いして。僕が『幻の光』を持っていって、寺島さんは「おかえり」という篠崎誠監督、僕すごい仲良しなんですけど、で来られていて。
通りすがりに最初お見かけしたんですよ。その時ね、黒で決められていて。(今までの役柄の)印象があるから「わ、怖いな、ちょっと声かけるのやめようかなぁ」ということが最初はあったんですけど。
映画を観ていただいて、そのあとお話をして。(日本に戻り)僕が覚えているのはね、そのあとご連絡をいただいて、下北でご飯を食べたんですよ。
その時に、自分のプロフィール写真とかインタビュー記事をご自身で持っていて、こういうものなんです、と渡してくれて。なんか熱く映画について語らいあったんです。話し出すとね、本当に人間味のあるね…こう、なんて言ったらいいんだろうなぁ、歳はひとつ下なんですけどね、なんだろうねぇ…温かい人なんですよ。
T:あんまり褒めないでくださいよ(照れくさそうに)
K:だから、次の映画(『ワンダフル・ライフ』)にオファーを、お願いした時は、寺島さんの下町のお兄ちゃんっぽい温かい感じっていうのが、あんまり映画の中で今まで撮られてなかったから、少し本人の地に近いところでね、そういう役をやっていただこうかなと、オファーをしたのがきっかけで…なんですけどね。
|
|
司:寺島さんは…
K:怖い時は怖いんですよ (会場笑)
T:初めて会ったのは、ロンドン映画祭で。その時『幻の光』が観てなかったんで、まずロンドン映画祭の期間中に観させてもらって。
もう、ぶっとんじゃって。ぐあーっとくる感じで。そのテーマ性がすごく、なんでこの作品を選んだのかなというのがあって。
それでその原作を日本に帰ってきてから読んで、是枝監督の今までのドキュメンタリーとかも観たくなってしまって、観させてもらったりとか。
いろいろ…すごく惹かれるものというか。初めてお会いしたのは(ロンドン映画祭で)『幻の光』を観終わったあと、ホテルのバーで一緒に話していたんですけど。
「この人裏切らないな」というか、「信用できるな」という、そういう自分の中でのカンが働いて…それでちょっと、その当時惹かれるものがありまして。
そのへんは、男が男に惹かれる部分というのは、やっぱり理屈じゃないところがあるんで。それで是枝監督のことをもう少し知りたいなあ、というか…そういう部分がずっとあって。
とても是枝さんの現場は、心が裸になれるというか、委ねられるというか、それでいて…
K:あんまり褒めないでね。(会場笑)
T:いえいえ…役者って、役に入ると、翌日には結構抜けたりできるんですけど、一番キツイのは、是枝さんの作品をやると、なっかなか(役が)深く入っちゃうので、抜けられないのが、凄く残酷だなぁと思って。
でもそうでないと、是枝さんの作品の中では、マッチしないんだろうな、というのがあって。
だから、大好きだけど、とても心の奥深くに怖さを秘めているというか。ちょっと半分…ビビっちゃいないんだけど、いい意味で怖いというか、好きな怖さというか。
それがこう、もっともっと、うーん(現場で)ドキドキしてもいいかなぁという感じで。これからも末永くお付き合いできたら、とてもありがたいなと思っています。(会場拍手)
|
|
司:ありがとうございます。最後に、お二人の今後の活動予定は?
K:じゃあ僕から…今ちょうど、この映画が海外をまわっていて…先月からスペイン、香港、明日からは釜山の映画祭に行って来まして。
ずっと今、この映画で、何ができたのか?何ができなかったのか?とか、どんな事を考えながら作ったのか?というのを反芻している状態なんですね。今年一杯はそんな作業を続けながら、次回作の構想をかためて、来年中には次の映画が撮れるように準備を進めようかな、と。今はそんなところですね。
司:会場の皆さんに一言お願いします。
K:(ちょっと考えて)…あ、宣伝していい?
この映画のDVDが出るんですけど…あのね、初めてオーディオコメンタリーというのをやったんですよ。今まで凄くね、出た役者さんと監督がその作品について喋ったり、「ここがこうだったよね」、「あぁだったよね」というは、恥ずかしくないかな?と思って…あまり人(他の監督)のを見たことがなかったんで。
ちょっとためらいながらその場に行ったんですけど、すんごい面白かったのね。(会場笑)
岡田(准一)くんと古田新太さんと3人で2時間喋ったんですけど、途中から古田さん酒が入っちゃったんですよ。
T:やっぱりね。
K:途中で、トクトクトク…とかビールをつぐ音が聞こえて、後半ね、ろれつがまわってなんですよ。(会場笑)
だから何を喋ってるかわかんないんですけど…一生懸命僕と岡田くんでね、真面目に「このシーンはこういうことを考えてやったんだよね」とか話してると、古田さんは全部ね、「それはお前、自己愛だろう」って。
演出とか演技のアイデアを全部自己愛で済まされちゃった。
それでほとんど与太話なんですけどね、でもね、あとで聞いたら面白い!…なので、是非買ってですね、2時間笑いながら観ていただけると、また映画とちょっと違った側面がちょっと見られるかもしれない。是非お手にとっていただければ、と思います。よろしくお願いします。本日はありがとうございました。(会場拍手)
T:冒頭でも言いましたように、皆さん忘れずに来週の金曜日、金曜日ですからね!10月20日! いちまるにぃまる!『逃亡者 木島丈一郎』テレビ初主演でございます!是非是非皆さんご覧ください!
あと、来週の土曜日だったかな、21日から『キャッチボール屋』、大崎(章)監督が初めてやる監督で、それが公開されます。それも是非観に行ってやって下さい。 えー(今年は)以上です!
来年は、初めてやる監督が、ひとり、橋口さんという方とやる予定でいます。出来たらいいなぁと思っています。…あ、言わなきゃよかったなぁ…まだ決まってないっ…。
K:橋口君?橋口…亮輔くん?あ、それは楽しみですねぇ。
T:はい、まだ春先 4月過ぎた頃ですね。
K:あ、ほんとぉ。楽しみにしています。
T:あと、『アンフェア』。 映画版、今撮影中です。それも来年(公開)だと思いますので、よろしくお願いします。末永く…忘れないで下さい!よろしくお願いします!ありがとうございました!(会場拍手)
|